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業界トレンド - ものづくり

2020年度版ものづくり白書3つのポイント 「DX」「不確実性」「ダイナミック・ケイパビリティ」

2020年度版ものづくり白書3つのポイント 「DX」「不確実性」「ダイナミック・ケイパビリティ」

2020年5月、経済産業省・厚生労働省・文部科学省による「2020年版ものづくり白書」が公開されました。製造業を取り巻く現状や課題について、新型コロナウイルスの感染拡大による影響にも言及し、今後取るべき戦略をメインに置いています。

「2020年版ものづくり白書」の概要について、「DX」「ダイナミック・ケイパビリティ」など注目すべきポイントを紹介していきます。

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目次

    2020年度版ものづくり白書のポイント

    「2020年版ものづくり白書」のポイントは、下記3つのキーワードに集約されるでしょう。

    • 不確実性
    • ダイナミック・ケイパビリティ
    • DX

    世界の不確実性の高まりが大きな課題として取り上げられており、新型コロナウイルスの感染拡大による影響もその要因のひとつとされています。そして、不確実性の高まりに対処するための戦略として、ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)の強化が挙げられ、DX推進はその有効な手段と位置付けられました。

    新型コロナウイルスの感染拡大による影響

    2020年、中国・武漢から広まった新型コロナウイルスの感染拡大による影響から、製造業ではサプライチェーンが寸断される事態が起こりました。近年の世界の不確実性の高まりからも、グローバルサプライチェーンの再構築の必要性が認識されています。

    サプライチェーンに生じた混乱

    サプライチェーンとは、製品の原材料・部品の調達から、製造、在庫管理や配送、販売といった流通過程を経て、消費者に届くまでの一連の流れを指すものです。

    かつてサプライチェーンを構成する製造業の工場などは、主に中国など労働賃金の安い国へと海外進出するケースが多い傾向がありました。しかし最近は、進出先の政治的リスク、地政学的リスクなどからリスク分散として複数の国への進出が始まっていました。その中には日本国内回帰を選択する企業も出てきています。

    製造業では緊急事態対応計画といって風水害、地震、感染症、供給者納品停止などの時にも出荷保証する体制が求められています。それに対する対応としても製造拠点を分散する傾向は今後も高まってくると思われます。

    というのも、現実に新型コロナウイルスによる経済への打撃が大きかったためです。

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    例えば、中国・武漢周辺は自動車部品工場が集積し、日本の自動車メーカーの完成工場も立地するなど、日本の自動車メーカーのサプライチェーンにおいて、重要な役割を担っていました。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大によって部品調達が寸断された結果、日本の進出企業は操業停止に追い込まれたのです。

    また、この影響は中国企業と取引のある国内製造業にも波及し、部品が届かないことから生産調整を余儀なくされるなど、サプライチェーン全体が大きな影響を受ける事態となりました。

    さらに、こうした経済への打撃は、2020年3月中旬の日経平均株価の歴史的な値下がりを招くことにもなっています。

    世界における「不確実性」の高まりとは

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    世界の政策不確実性指数は、2008年のリーマンショック以降、急激な上昇傾向にあります。

    政策不確実性指数とは、国家の政策の予測しにくい変化や経済の不透明性を定量評価したものです。昨今では、英国の国民投票によるEU離脱の決定や米中の貿易摩擦の激化が、そして2020年1月からの新型コロナウイルスの感染拡大が不確実性を高めている主要因とされています。

    不確実性が高まっている現状こそが「ニューノーマル(新常態)」になりつつあるのです。

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    この世界の不確実性の高まりは、サプライチェーンのあり方にも影響を及ぼしています。

    製造業のサプライチェーンの歴史を振り返ると、1980年代前半までは、自国内で製造工程が完結するのが一般的でした。1980年代後半になるとデジタル化によってコミュニケーションコストが低下したことから、サプライチェーンのグローバル化が進み、複数の国に製造工程を分散して、サプライチェーンの最適化を図ることが浸透しました。

    しかし、新型コロナウイルスの影響によって、こうしたグローバルサプライチェーンの脆弱性が浮き彫りになりました。世界の不確実性の高まりによるサプライチェーンの寸断リスクに対処するために、国内や第3国からの調達に柔軟に切り替えられる体制への再構築が重要視されています。

    ダイナミック・ケイパビリティの強化とは

    世界の不確実性の高まりが常態となりつつあるいま、「2020年度版ものづくり白書」で製造業が強化するべき戦略と位置付けられたのが、ダイナミック・ケイパビリティです。実際にダイナミック・ケイパビリティの強化を行い、成長につなげている企業の事例も取り上げられています。

    ダイナミック・ケイパビリティの三能力

    ダイナミック・ケイパビリティ(企業変革力)とは、環境の変化に対応するために、企業や経営者が社内外の経営資源の再結合や再構成を行って変革する能力のことをいいます。

    ダイナミック・ケイパビリティには、「感知」「捕捉」「変容」の三能力と呼ばれる要素が必要とされています。

    • 感知:脅威や機会を感知する能力
    • 捕捉:機会を捉えて資源の再構成や再構成を図ることで競争優位性を構築する能力
    • 変容:競争優位性を持続的なものにするために組織全体を刷新して変容していく能力

    そして、ダイナミック・ケイパビリティの三能力の強化に有効とされているのが、デジタル化です。具体的には、リアルタイムでのデータ収集・分析やAIによる予測・予知、3D設計・シミュレーションの導入による製品開発の高速化、製造工程のデジタル化による変種変量生産や柔軟な工程変更への対応などが挙げられます。


    製造工程でのデジタル化については、大企業を中心として進んできています。目的は未然防止です。つまり、人によるミスをいかに減少させるかを追求して、自動化が進んでいます。

    例えばMES(製造実行システム)では、製造条件はレシピとしてあらかじめ設備にインストールされていますが、レシピ選択を作業指示書にしたがってタッチパネル選択するという工程でも入力ミスが起きるため、バーコードリーダーによる自動入力にするなどデジタル化が進んできています。

    国内製造業の成功事例

    「2020年度版ものづくり白書」では、ダイナミック・ケイパビリティの強化による国内製造業の成功事例として、富士フイルムホールディングス(株)とダイキン工業(株)が紹介されています。

    富士フイルムホールディングス(株)の成功事例

    【変革に至った背景】
    写真フィルムを主力事業にしていたが、デジタル化が進行。

    【施策と効果】
    写真用フィルム需要の激減を予測し、世界で初めてデジタルカメラを開発して新たな市場を開拓。また、化粧品や医薬品、再生医療などの新規事業に参入。化粧品事業への参入では自社のコア技術を応用する一方、医薬品・再生医療事業への参入では、同社の技術やノウハウと組み合わせることでシナジーが生まれる会社や事業を買収するなど、M&Aを積極的に活用することで、スピーディーな成長につなげた。現在では、ヘルスケア関連が主力事業となっている。

    ダイキン工業(株)の成功事例

    【変革に至った背景】
    主力事業の空調製品は、国や地域による特性が色濃く反映され、季節や天候、景気などによる需要変動も大きい。

    【施策と効果】
    在庫切れによる販売機会の損失と、作り置きによる過剰在庫の発生の双方を避ける戦略として、現地で生産してスピーディーに提供することでリードタイムを短縮する、市場最寄化戦略を展開。また、生産ラインを「搬送」と「検査」の2つの機能に分けてモジュール化。これにより、生産量の変動や地域ニーズの違いに対応した生産ラインを素早く立ち上げて、海外市場にスピーディーに参入できる体制を構築した。

    製造業におけるデジタル・トランスフォーメーション(DX)

    ダイナミック・ケイパビリティの強化にはデジタル化の推進が有効ですが、「ものづくり白書2020年度版」では、国内製造業ではDX推進の取り組みが停滞していることが課題とされています。

    DXとは

    DXはデジタルトランスフォーメーションの略で、経済産業省による「デジタルトランスフォーメーションを推進するためのガイドライン」では、

    「企業がビジネス環境の激しい変化に対応し、データとデジタル技術を活用して、顧客や社会のニーズを基に、製品やサービス、ビジネスモデルを変革するとともに、業務そのものや、組織、プロセス、企業文化・風土を変革し、競争上の優位性を確立すること」

    と定義されています。

    つまりDXとは、IT化やデータ活用によって、製品やサービス、ビジネスモデルはもとより、企業文化や企業自体を変革し、競争優位性を確立することをいいます。

    しかし、国内製造業ではDXがなかなか進んでいないという現状があります。

    DXが進まない製造業の課題と現状

    国内製造業では、ダイナミック・ケイパビリティの強化につながるデータ収集・利活用が停滞しているという現状があります。また、設計企画や製造オペレーションの現場でも、DXが進まないことが課題となっているのです。

    データ収集・利活用の停滞

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    国内製造業で製造工程のデータ収集に取り組んでいる企業の割合は、2017年は67.6%に及びましたが、以降は減少傾向にあり、2019年には51.0%まで落ち込み、約半数の企業となりました。

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    また、国内製造業でデータ利活用に取り組んでいる企業の割合も、停滞・減少傾向にあります。

    2017年と2019年で比較すると、個別工程の機械の稼働状態についての「見える化」はほぼ横ばいですが、販売後の製品の動向や顧客の声の設計開発や生産改善への活用では、「実施している」「実施する予定がある」「可能であれば実施したい」の割合がいずれも減少しています。

    こうした実態から、国内製造業でのデータ収集・利活用に尻すぼみ感があることが危惧されています。

    設計企画や製造オペレーションなど「現場」にも堆積する課題

    DX推進への取り組みの鈍化は、設計企画や製造オペレーションの現場にも波及しています。

    出典:経済産業省「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」

    3DCADを導入して、設計企画段階でバーチャル・エンジニアリングを行い、詳細な仕様の決定を早期に行うことは、製品開発のリードタイムの大幅な短縮につながります。しかし、バーチャル・エンジニアリングを行うには3DCADでの設計情報の受け渡しが基本となりますが、3Dデータのみで設計を行う企業はわずか17%です。バーチャル・エンジニアリングが浸透していない実情がうかがえます。

    出典:経済産業省「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」

    また、2016年と2018年で2DCADのみを使用する企業の割合はほぼ横ばいですが、主な設計手法を2Dとする企業の割合が増加するなど、2Dへの回帰も見られます。

    出典:経済産業省「我が国ものづくり産業が直面する課題と展望」

    製造オペレーレーションでは、5Gの無線技術などを導入することで、工場内の機械のワイヤレス化を行なうと、製造ラインのレイアウト変更を容易に行いやすくなり、工程設計の柔軟化が図れます。また、リアルタイムでの遠隔操作や保守点検、無人配送など、人手不足への解消への貢献も期待されています。

    しかし、5GやWi-Fi6などの次世代通信技術への関心がある企業は半数を超える程度にとどまっています。

    製造業に求められる人材確保とDX導入への取り組み

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    デジタル技術を活用している企業に対して行った、主力製品の製造にあたって重要となる作業内容の5年後の見通しに関する調査では、「今までどおり熟練技能が必要」と回答した企業の割合が過半数の作業内容が大半を占めました。製造業では、今後も熟練技能を持った人材は必要とされると考えられています。

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    一方で、主力製品の製造にあたり鍵となる技能に関しては、技能系正社員の「ICTなどのデジタル技術を組み込んだ設備・機器等を利用する知識」、技術系社員の「ICTなどのデジタル技術をものづくり現場等へ導入・活用していく能力」のいずれも、現在と比較して5年後の見通しが約3倍となっています。

    製造業のDX推進にはIT人材の確保が急務であり、数学知識を持つ人材の活躍の機会の拡大を図ることが必要です。企業においても、ICTに関する知識・能力を持つ人材の育成や確保が必要と考えられていることが浮き彫りになりました。

    出典:経済産業省「2020年版 ものづくり白書『概要』」

    デジタル技術の活用を担う人材の確保の方法は、デジタル技術導入企業では、「自社の既存の人材をOJT」や「自社の既存の人材をOFF-JT」が半数を超えています。

    しかし、デジタル技術未導入企業で、一からICTを活用できる人材を育成してデジタル技術を導入するのはハードルが高く、時間も要することから、中途採用や外部人材の受け入れを視野に入れるべきです。実際に、デジタル技術導入企業でも、「ICTに通じた人材の中途採用」は約3割、「外部人材の活用」は1割弱あるなどの動きもみられます。

    たとえば、現場で手作業集計していた製品不良の発生頻度を自動で集計できるようになると、手間が省けるだけではなく、発生時間や発生箇所などのデータ解析を行うことで原因を突き止めやすくなります。競争力を高めていくには、小さなことからでもデジタル技術の導入に取り組んでいくことが重要です。

    まとめ

    新型コロナウイルスの感染拡大が起こる以前から、世界の不確実性の高まりが常態化していたことを踏まえると、製造業で競争優位性を確保し続けていくには、ダイナミック・ケイパビリティの強化が不可欠です。

    そして有効な手段であるDX推進のために、IT人材を確保することが急務といえます。特に、デジタル技術未導入企業では、中途採用や外部人材の受け入れも視野に検討すべきでしょう。

    日研トータルソーシングでは、IT分野への人材派遣も行っております。人材確保にお困りの担当者様は、ぜひお気軽にご相談ください。

    監修者プロフィール

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    監修:細原 敏之(ほそはら としゆき)

    高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。

    この記事を書いた人

    Nikken→Tsunagu編集部

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