写真

日建×未来インタビュー

介護に挑戦する人を支え、
変化する介護業界をともに歩む

有識者対談
石山麗子教授×山本竜馬エリア長

ケアマネジメント、家族支援、高齢者介護を専門領域に長年研究と人材育成に尽力する石山教授と、日研トータルソーシングでメディカルケア事業(医療・介護・福祉分野)のマネジメントにあたる山本エリア長の対談を通して、介護業界の現状や仕事の魅力、そして未来について考えます。

日研トータルソーシングの仕事は、「派遣して終わり」ではない

山本 当事業部はメディカルケア領域、特に介護分野への人材派遣を行ってきました。介護業界の現状について、石山先生はどのように捉えていらっしゃいますか。

石山  一言でいえば、「潜在的な人手をうまく受け入れられるか」と、「テクノロジーをいかに活用するか」という2点で、過渡期にあると思います。今後ますます利用者の増加が予想される介護業界の人手不足を改善するためには、現状の就職希望者だけでは足りません。業界の外の方にどれだけ興味を持ってもらい参加いただけるかで、今後の業界のあり方が大きく変わってきます。また負担の軽減策としてテクノロジーの活用が叫ばれていますが、一朝一夕には行かず、各所で試行錯誤が行われています。

山本 潜在的な人材の活用は、まさに当社が強みとしています。当社は無資格・未経験の主婦層やシニア層を中心にサポートしています。特に昨年からはコロナにおける飲食・サービス業界への影響もあり、他職種からの転職者も増加しています。
しかし、現場によっては人手不足から新人へのサポートや教育体制に充分な時間を割けていないという課題があるようです。
当社はこうした状況を改善しようと、「仕事を続けていくためのサポート」に力を入れています。派遣後も定期的にスタッフに連絡を入れて様子を聞いたり、何かトラブルがあれば施設管理者との三者面談の場を設けて問題解決を図ったりと、「派遣して終わり」にせずに派遣スタッフや施設との信頼関係を築くことを目指しています。

石山 私も施設管理責任者だったことがあり、そのように第三者としてスタッフや事業所と関わってくれる存在のありがたさがよく分かります。人材がなかなか定着しないと悩む事業所は「問題がどこにあるのか」「他の事業所はどのように取り組んでいるのか」、とても気になっています。
また介護現場は命をお預かりする場所。毎日他者をケアしているためか、自分のケアを忘れがちです。知らず知らずのうちにストレスを溜めてしまう人が多いので、その点からも就職後のサポートは非常に重要だと思います。

写真

「利用者を幸福にすること」がテクノロジー導入最大の目的

山本 テクノロジーについては、施設管理者が導入を目指しても、実際に使用するスタッフが乗り気ではないことがあります。その辺りはどのようにお考えですか。

石山 まず、介護の現場でのテクノロジー活用のポイントは「生産性向上」を最終目的だと勘違いしないことです。
そもそも介護とは、効率化や生産性ではなく、介護を受ける方がいかに快適に、尊厳を保って、幸福に生活を送ることができるかを目指しています。利用者と毎日触れ合うスタッフの皆さんは、そのことをずっと考えている。だから、「効率化のために機械を使おう」と言われれば、当然抵抗を感じてしまいます。

山本 なるほど。他の産業ではテクノロジーが効率化や生産性とすぐに結びつきますが、介護の場合はそうではないということですね。

石山 はい。さらに理想を言えば、どのようなテクノロジーを導入するかは利用者が選ぶべきだと思います。実際使われる側が快適でなければ、元も子もありません。
機械で入浴を補助する特別浴室をご存知でしょうか。体が不自由な方の入浴を補助する設備ですが、以前利用者ご本人から「いきなり背中から入れられるとお湯の温度が分からないので怖い。それにその姿勢だと背中の後に首、そして口のすぐ下までお湯が来る。もし機械がこのまま止まらなかったらどうしよう、と想像するその怖さをイメージしてほしい」と言われ、ハッとしました。

山本 言われてみれば、確かに怖いですね……。

石山 特別浴室の利用者は会話にも不自由があり、ご自身の感覚を説明できないことが少なくありません。だからこそ利用者の気持ちをよく想像する必要があります。
テクノロジーをうまく使うためには、全ての業務を機械化するのではなく、人間がすべき業務とそうでない業務を切り分け、本当に利用者のためになる製品を選び取る作業が不可欠です。

山本 具体的に、テクノロジーをうまく利用できている例などはあるでしょうか。

石山 利用者の転倒など異常を察知してスタッフに知らせてくれるセンシング技術を用いて、「緩やかな見守り」を行っている例があります。介護施設に入居される方は、「本当は1人部屋がいいけれど、何かあった時に不安だから」と、仕方なく共同の部屋を選択していることがあります。センサーを活用すれば、プライバシーを守りつつ安全を確保できます。これはテクノロジーが良い方向に使われた例ですよね。
また、「スタッフがいつも忙しそうで、話しかけづらい」と遠慮している方には、コミュニケーション系のロボットもおすすめです。何気ない会話が後に重大な意思決定の参考になることもありますし、会話によって生き生きとする方も多いです。

写真

介護の仕事に挑戦する人が、最初の一山を超えるために

石山 誰でもいずれは歳をとり、介護サービスを受ける可能性があります。今の日本社会はこの当たり前のサービスを支える役割を、限られた数のスタッフに頼ってしまっている。より良い未来のためには、新たな参加者を受け入れる仕組みづくりが急務です。
そんな中、日研トータルソーシング様のような潜在的な人材を受け止め、サポートする役割は今後ますます重要になっていくと思います。

山本 ありがとうございます。介護の仕事は、派遣後1週間、1ヶ月、半年といくつかポイントがあり、そこさえ乗り越えられればずっと続けていくという人が多い。長く働いている方からは、「“ありがとう”と言われることが嬉しい」「利用者との関わり合いにやりがいを感じる」という声を頻繁に耳にします。当社は未経験のスタッフがその一山を超える手助けがしたいと思っています。

石山 介護は、「人間同士の長い関わり合い」になります。最初は他人でも、本当は見せたくないような部分をも見せ合い、日常的に関わっていくうちに、家族のような存在になっていく。ごまかしが効かない、人と人の心の距離が近い仕事です。この「関係の深さ」が何よりの魅力ですよね。

山本 「体も心も距離が近い」ですね。さまざまな人生を送ってきた利用者の方々と関わり、学ぶことや気付かされることもたくさんあります。勇気を持って介護業界に挑戦してくれた方もそんなやりがいや面白さを見出すことができるよう、全力でサポートしていきたいです。
また今後は、当社の主力領域である製造やエンジニア関連事業とも協力して、介護事業のテクノロジー活用にも貢献していきたいと考えています。その際は、本日お聞きしたご意見を参考にさせていただきますね。

石山 これから、ですね。ご活躍を期待しています!

写真

石山麗子さん

国際医療福祉大学大学院 教授
1992年武蔵野音楽大学を卒業、音楽療法を通じて知的障害児入所施設に入職。2001年介護支援専門員として介護業界に参入し、2013年国際医療福祉大学大学院博士課程修了、その後厚生労働省老健局振興課 介護支援専門官として介護保険制度の改定にも関わる。2018年より現職。介護業界におけるデジタル活用を進めるケアテック協会顧問も務める。

写真

山本竜馬さん

日研トータルソーシング株式会社/メディカルケア事業部/西日本エリア長
2012年 日研トータルソーシングに入社。現在はメディカルケア事業部の西日本エリア長として、各オフィスの運営管理のほか、オフィス責任者のメンタルケアや各オフィスにおけるコミュニケーションサポートを担う。

写真

エンジニアのキャリアの充実は
地球規模の課題解決にもつながっている

エンジニア事業部 高野由仁さん
エンジニア事業部 濱村真伍さん

日研トータルソーシングのエンジニアとしてEVやハイブリッド車の開発に携わる高野さんと、エンジニア事業部の担当営業として…

写真

これからの⼟⽊・建築業界で、
変わるものと、変わらないもの

法政⼤学 デザイン⼯学部 今井⿓⼀教授
コンストラクション事業部 清⽔崇司エリア⻑

⻑年⼟⽊・建築分野でのICT活⽤について研究され、都市データの活⽤や施⼯現場の⽣産性向上に尽⼒されてきた今井様と…

写真

専門性を武器にキャリアを磨き続ける
DX時代に活躍できる多様性のある人材をサポート

オペレーショナルエクセレンス研究所 竹内芳久様
保全事業部 高松芳彰次長

長年コンサルタントとして、製造業の現場改革から経営まで幅広く関わってきた竹内様と、日研トータルソーシングで製造業界…

写真

働く人と、企業をつなぐ
私たちのあるべき姿

⽇研トータルソーシング 専務取締役
⾼橋 渉

長年クライアント企業と働く人を見つめてきた高橋専務取締役に、日研トータルソーシングの「あるべき姿」について聞きました。

写真

課題に向き合い、チャンスを掴む
日研トータルソーシング 次の10年の挑戦

⽇研トータルソーシング 取締役
⼩嶋 ⾹⽉

小嶋取締役にコロナ禍を経た関連業界の今と、その中で日研トータルソーシングがとる戦略について聞きました。