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日建×未来インタビュー

これからの土木・建築業界で
変わるものと、変わらないもの

有識者対談
法政大学 デザイン工学部 今井龍一教授
コンストラクション事業部 清水崇司エリア長

長年土木・建築分野でのICT活用について研究され、都市データの活用や施工現場の生産性向上に尽力されてきた今井様と、日研トータルソーシングで主に施工管理技術者の育成、派遣に力を入れてきた清水エリア長の対談を通して、土木・建築業界の未来について考えます。

人手不足と働き方改革が、今現場に迫っている

清水 当社では土木・建築業界に、施工管理技術者を中心とした人材の派遣を行ってきました。土木・建築業界の現状について、今井様はどのように捉えていらっしゃいますか?

今井  現場では、毎年大勢の熟練技術者が引退していきます。人手が不足する中で、クオリティを落とさず一人一人の生産性を上げていく工夫はどの現場でも避けては通れないテーマですね。

清水 解決の一助としてICT技術の導入が徐々に進んでいると聞きますが、その辺りについてはいかがでしょうか。

今井 積極的に活用していくべきです。私の研究領域でいえば、カメラやレーザーを用いて現場の地形をデジタルデータ化する技術がありますが、こうした測量は「差分」に強い。工事が計画通り行われているかを見る際にも、災害時に以前との比較をする際にも役に立ちます。さらにそのデータを遠隔で共有することで移動の手間が省け、効率化につながります。ほかにも職人の皆さんの労務管理をウェアラブル端末で自動化するシステム、現場をカメラで常時撮影して危険な箇所に人が入ったら即座にアラートがなるシステムなど、現場の安全性を高め効率化も叶えるツールが日々開発され、実証実験や現場導入の段階に来ています。

清水 一方で、労働時間の削減も業界全体の課題の一つですよね。労働時間の上限規制の適用が2024年に迫り、これまで猶予されていた土木・建築業界でも一カ月の残業時間を大幅に縮小していくことが求められています。当社では施工管理者の業務負担を減らすため、これまで施工管理者が担っていた事務作業を専門に担う職種の人材派遣をより拡充していこうと思っています。

今井 働き方改革ですね。これまでの「時間を好きなだけ使って成果を出す」から、「限られた時間内に成果を出す」へと意識を変えていかなければいけません。どうも近年の土木・建築業界は安全のため、ルール徹底のためと書類仕事が増える傾向にあります。分業に加えて「そもそもこの作業は必要なのか」「自動化できないのか」など、制度や仕組みから変えていくような能動的なアクションも、今後より必要とされていくでしょう。

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働き方が変化する中でも「人と人」は変わらない

清水 デジタル化や効率化、残業抑制と働き方が大きく変わる中で、今後土木・建築業界で求められるのはどのような人材・力だと思われますか?

今井 ITに関する知識もあればいいですが、それ以上に「コミュニケーション」が大事になってくるのではないかと思います。人口が減る以上、生産性の向上は必要だと思う一方で、個人的には効率化の名の下で職場の仲間とのコミュニケーションが減り、日本企業の良さでもあった「人と人」の関わりを大切にする文化が失われていくことに寂しさや違和感も感じていて。

清水 ここ数十年で職場の同僚と過ごす時間が劇的に減っていると聞いたことがあります。リモートワークの広がりでその傾向はさらに強まっていますね。

今井 はい。だからこそ、コミュニケーションやその力がこれまで以上にポイントになってくると思うのです。コミュニケーション力とは、相手が必要としていることを先回りして考え、動く力です。時代によって〇〇の知識が必要だ、△△の技術が必要だと言われ、それらを学び続けることももちろん大切です。でも「どうしたら仕事相手が気持ちよく働けるか」と思いやることは、働くためのもっと根本的な意識ですよね。

清水 確かに、分業やリモートワーク化が進み対面での会話が減ることを考えても、相手のことを考えて行動できるかどうかは大きなポイントになりますね。

今井 サポート的なお仕事をされている方は特にその意識が当てはまります。各業界で、変化する時代の波に乗りキーとなるポジションにつき、一生懸命働いている人たちがいると思います。そういう人たちにいかに寄り添い、支えていくか。そうやって周囲の人のために働ける人は、いつの時代もどこでだって重宝されるはずです。

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時代を切り開く人のそばに寄り添い、支え続ける

清水 これからの土木・建築業界についてはどう思われますか。

今井 今後日本の人口は減少していき、「作り続ける」から「メンテナンスしていくインフラを取捨選択する」時代へと突入していきます。その時どう選び、どう市民に説明していくのか。これからの世代にはそんな難しい仕事が待っています。一方で、土木・建築の対象は、今目の前に広がる森羅万象全てです。人の生活と切り離せないものであり、人が暮らしていく限り必要とされ続けることは確かです。

清水 「働き方改革」も進んでいきますね。

今井 はい。ただ私は、「働き方改革」の流れに複雑な思いも持っています。「仕事を一生懸命やる」こと自体は悪いことではなく、むしろ素晴らしいこと。自分の力を発揮して、責任のある仕事を任されて、目標達成のために一生懸命に頑張る。そうやって働いている時はいくら忙しくても楽しいものですよね。

清水 同感です。

今井 でもそれで体や心を病んでしまったら元も子もありません。学生にもよく伝えていますが、働いていくためにはメンタルを含む健康が第一。その上で、「プライドを持って働く」「学び続ける」「周囲の人に思いやりを持って接する」などを心がけていくことが大切です。

清水 当事業部では数年前より、社員の仕事への不安や悩みなどを察知しケアをする「ES推進室」という部署を設立しています。ES推進室のスタッフが営業と一緒に各現場を訪ね社員と直接会話し、必要ならば派遣先企業と調整して問題解決を図る仕組みです。

今井 良いですね。「人を大切にしたい」という思いを持っている点で、御社にはとても共感し、期待しています。これからも各分野で働く人を支えるとともに、現場でキーとなって働く人をサポートする人材も多く輩出していってほしい。それはまさに、御社の「人に寄り添い、支える」という姿勢に通じるものであり、御社ならではの役割だと思います。

清水 ありがとうございます。今後は当社の主力領域である製造やエンジニアリング領域との協働で、土木・建築領域のICT活用や効率化にも貢献していけたらとも思っています。私たちの強みを生かし、努力を続けます。本日はどうも、ありがとうございました!

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今井 龍一さん

法政大学 デザイン工学部 教授
関西大学・関西大学大学院で土木工学を学び、大手建設コンサルタント、国土交通省にて勤務。大学で教鞭もとり、情報通信技術を用いた測量やデータ解析を基盤に自動運転用地図制作、人流データ解析ツール制作、施工効率化など幅広いプロジェクトに産官学の立場より携わる。2020年より現職。

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清水 崇司さん

日研トータルソーシング コンストラクション事業部 東日本エリア長
社会や生活インフラとして形に残る仕事という点に惹かれ、施工管理者として土木・建築業界へ。現場で経験を積んだ後、2016年、日研トータルソーシングに入社。現在はコンストラクション事業部の東日本エリア長として、各オフィスのマネジメント、派遣先との調整業務などを担う。

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エンジニアのキャリアの充実は
地球規模の課題解決にもつながっている

エンジニア事業部 高野由仁さん
エンジニア事業部 濱村真伍さん

日研トータルソーシングのエンジニアとしてEVやハイブリッド車の開発に携わる高野さんと、エンジニア事業部の担当営業として…

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専門性を武器にキャリアを磨き続ける
DX時代に活躍できる多様性のある人材をサポート

オペレーショナルエクセレンス研究所 ⽵内芳久様
メディカルケア事業部 ⼭本⻯⾺エリア⻑

長年コンサルタントとして、製造業の現場改革から経営まで幅広く関わってきた竹内様と、日研トータルソーシングで製造業界…

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介護に挑戦する人を支え、
変化する介護業界をともに歩む

国際医療福祉⼤学⼤学院 ⽯⼭麗⼦教授
メディカルケア事業部 ⼭本⻯⾺エリア⻑

ケアマネジメント、家族支援、高齢者介護を専門領域に長年研究と人材育成に尽力する石山教授と、日研トータルソーシングで…

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働く人と、企業をつなぐ
私たちのあるべき姿

⽇研トータルソーシング 専務取締役
⾼橋 渉

長年クライアント企業と働く人を見つめてきた高橋専務取締役に、日研トータルソーシングの「あるべき姿」について聞きました。

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課題に向き合い、チャンスを掴む
日研トータルソーシング 次の10年の挑戦

⽇研トータルソーシング 取締役
小嶋 香月

小嶋取締役にコロナ禍を経た関連業界の今と、その中で日研トータルソーシングがとる戦略について聞きました。