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垂直立ち上げの優劣が企業競争力を左右〜TPM・予知保全の重要性

2021/02/24

顧客の要求するリードタイムや商品ライフサイクルの短縮化が進む昨今では、新製品の発売開始直後からフル生産体制をとる「垂直立ち上げ」の重要性が増しています。いまや製造業では、垂直立ち上げの優劣が企業競争力を左右するとまでいわれているのです。

垂直立ち上げが注目されている背景や、導入に欠かせない要件などを紹介していきます。

垂直立ち上げとは

垂直立ち上げとは、新製品の販売を開始する際に、最初からフル生産体制をとることをいいます。

通常、新製品の製造を開始し新たに生産ラインを立ち上げる際には、当初は生産設備の故障や製品不良が起こる可能性が高いことから、生産量を段階的に拡大していくものですが、垂直立ち上げでは、初速から生産設備をフル稼働させる体制を構築します。

垂直立ち上げのメリットと注目される背景

垂直立ち上げが注目されている背景にあるのは、商品ライフサイクルの短縮化です。また、垂直立ち上げには、収益性の最大化を図れるというメリットもあります。

商品のライフサイクルの短縮化

昨今では顧客のニーズの多様化から多品種化が進み、商品のライフサイクルが短縮化。これが、垂直立ち上げが求められる大きな要因です。

商品のライフサイクルは、下記の過程をたどるとされています。

  • ▪ 導入期
  • ▪ 成長期
  • ▪ 成熟期
  • ▪ 衰退期

従来は導入期から成長期、そして成熟期にかけて緩やかに売上が上昇していくのが一般的でした。しかし、商品のライフサイクルが短縮化した結果、導入期から成長期において売上や販売量が急激に伸びる傾向が目立つようになりました。そのため、設備投資費用を回収して利益を確保するために、新製品を発売した段階で生産設備をフル稼働させられる体制を築くことが重要となってきているのです。

収益性の最大化

商品のライフサイクルの特性からも、垂直立ち上げは収益の最大化というメリットを生み出します。

商品のライフサイクルにおいて、導入期は生産設備などの先行投資や宣伝広告費が発生するため、赤字になりやすい時期です。そして成長期は、製品の認知度が向上して売上が増加する時期で、ここから利益も増えていきます。

しかし、成熟期になると、売上が最大となる時期ではあるものの、市場に製品が行き渡ることで伸びは鈍化します。また、参入する企業の増加によって価格競争が起こった結果、値引きを行うことで利益率が低下してしまうのです。そして、衰退期になると、顧客のニーズと製品が合わなくなり、売上が低迷します。

一方、垂直立ち上げによって、導入期から成長期にかけて急激に販売量を増加させる体制を構築できれば、値引きをせずに多くの数量を販売できるため、収益性を最大化できます。

垂直立ち上げの優劣は製造企業の競争力を左右する

垂直立ち上げの優劣は、設備故障や製品不良などによるトラブルがなく、いかにスムーズに新製品の製造体制の立ち上げを図れるかにかかってきます。最近では、この垂直立ち上げの優劣は、製造企業の競争力に大きな影響をおよぼす時代になってきました。

商品のライフサイクルが短縮化したことで、新製品の立ち上げから安定生産までに時間がかかっていると、市場ニーズの低下、製品寿命が迫ってしまい、機会損失が発生します。また、顧客の要求するリードタイムも短縮化していることから、新製品の立ち上げの段階で機械の故障や製品不良が頻発している状況では、求められる納期に間に合わないといった事態も起こり得ます。納期の遅延によって信用を失うと、今後の受注量の減少、ともすれば取引の停止をも招く事態にまで発展することもあるでしょう。

新製品や新たな生産設備の立ち上げで、故障や製品不良が頻発するのは、これまでの製品不良や設備の不具合を踏まえた製品設計や設備設計が行われていないことが主な要因です。

製造業に求められる垂直立ち上げの要件

製造業における垂直立ち上げの実現には、新製品の製造立ち上げ段階で、設備故障や製品不良を起こさない万全の体制構築が求められます。そうした体制づくりにおいて基本となるものが、「TPM(総合的設備管理)」です。

シームレスな垂直立ち上げに不可欠な「TPM(総合的設備管理)」

垂直立ち上げを円滑に進めるには、「TPM(総合的設備管理)」の導入が不可欠です。TPMとは「Total Productive Maintenance」の略で、「全員参加の設備保全」とも呼ばれる管理手法です。TPMでは、生産技術部門だけではなく、開発・設計部門や管理間接部門も設備保全に関わります。一つの部門では解決が難しい特定業務を遂行するために、横断的に人材を集める「機能横断型チーム(多機能チーム活動)」に近い課題可決法と言えるでしょう。

TPMは、生産システムのあらゆるロスをゼロにする「生産効率の極限追求」を通じて、継続的に生産性を向上させて収益を確保することを目的とするものです。ロスゼロを目指すには、過去のロスを顕在化して分類したうえで、ロスの削減や再発防止に努めること。あるいは潜在化したロスを未然に防ぐための対策が必要です。

こうした対策を、設計部門や生産技術部門にて、新製品や新規生産設備の設計に盛り込むことで、設備故障やチョコ停、製品不良などによるロスを防止し、スムーズな垂直立ち上げが可能となります。

このように計画の初期の段階で生産性を考慮した設備設計や設備保全の手順を検討することは、アメリカの自動車メーカーなどが取り入れている先行製品品質計画(APQP)でも重要です。

設計・制作など開発上流工程で不具合を摘出

新規設備の立ち上げ段階から生産効率を上げるためには、故障しにくく保全しやすい、安全性の高い設備を設計することが重要です。

また、実際に生産ラインを稼働させてから、生産設備の故障や製品不良などのトラブルが頻発すると、スムーズに垂直立ち上げを行うことができません。そこで、上流工程の開発・設計段階で、生産設備の故障や製品不良につながる不具合を摘出し、対策を講じた設計へと変更しておきます。

さらに、製品設計においては、製品としての機能を満たすことはもちろんですが、加工性や組立のしやすさに配慮することも大切です。例えば、オートメーション化された生産設備で製造を行うと、製品の品質が安定しやすくなります。

設備チェックシートや設計基準を整備する

新規設備の問題点を開発・設計段階で洗い出すには、設備チェックシートや設計基準を整備して、設備に備えておくべき条件の明確化を図ることが必要です。また、設備チェックシートや設計基準を設計に反映するスキームも構築します。

製造設計の品質・コスト管理

顧客のリードタイムが短縮化している中で垂直立ち上げを実現するには、開発・設計期間の短縮はもちろんのこと、同時に品質の確保を求められます。また、収益を高めるためにはコストを抑えることも重要です。

品質管理においては、異常検出や異常処理のフローを明確化し、早期に対応できる体制を構築することが必要です。また、ICTの導入やアウトソーシングの活用によってコストダウンを図ることも検討すべき点になります。

予知保全を徹底しダウンタイムを回避する

開発・設計段階で不具合を摘出して、製品や生産設備の設計を改善し、予防保全を徹底していても、製品不良や設備故障といったトラブルから、ダウンタイムが発生する可能性は残ります。そこで、トラブルによるダウンタイムの発生の防止に役立つのは、予知保全という保全方法です。

予知保全とは、センサーなどのIoT機器を用いて、生産設備の稼働状況のデータを収集して状態を把握し、トラブルの予兆を検知し、事前に対処する保全方法をいいます。データを連続監視し、どの程度の数値でどの設備の保全修理を行うべきかを標準化しておくことで、効率的な保全業務を行うことができます。

トラブルが発生した後に行う事後保全では、原因の追求を行った後に修理対応を実施するため、ダウンタイムが長くかかりますが、予知保全の導入でダウンタイムを最小限に抑えられれば、生産性が向上します。

関連記事:設備保全とは?考え方と重要性~環境変化により顕在化する課題とはなにか

まとめ

垂直立ち上げの実現で、顧客の求めるリードタイムに対応するとともに、収益性の最大化を図ることができます。重要性が増す垂直立ち上げの実現には、開発・設計段階で設備や製品の不具合を摘出して改善を図るとともに、保全体制の整備が欠かせません。

なお、弊社テクノセンターでは保全に関する研修を実施しています。弊社プログラムを修了すると、保全技能士の2級相当の知識と経験を得ることが可能で、保全に関する知識や経験が豊かな人材確保のサポートを承っております。

  • 監修:細原 敏之(ほそはら としゆき)
    高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。
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