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業界トレンド

バイオマス発電とは?仕組みやメリットから将来性と課題をわかりやすく解説

バイオマス発電とは?仕組みやメリットから将来性と課題をわかりやすく解説
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バイオマス発電とは、再生可能エネルギーである「生物資源」を燃料とする発電方式です。地球環境への負荷を軽減し、地域の農山漁村の活性化などにも寄与するほか、国内ではバイオマス発電を推進する法律も施行され、高い将来性が期待される技術分野として注目度が増しています。

本記事では、バイオマス発電の仕組みやメリットとデメリット、今後の展望や課題について考察します。

バイオマス発電とは
  • バイオマス発電とは、動植物等を由来とする生物資源を燃料に用いた発電方式
  • カーボンニュートラルな発電方式であることから、将来性が高く評価されている
  • 太陽光発電や風力発電など再生可能エネルギーを用いた従来の発電方式と比較して安定した発電量を見込める

バイオマス発電とは

バイオマス発電とは

バイオマス発電とは、動植物等を由来とする生物資源を燃料に用いた発電方式です。

  • Bio(バイオ):生物資源
  • mass(マス):量

この2つの言葉を組み合わせ、「バイオマス」発電と総称されています。

バイオマス発電では、生物資源を直接燃焼させるほか、ガス化させたうえで燃焼させ、そのエネルギー(バイオマスエネルギー)でタービンを回して発電する仕組みが採用されています。このように、燃料をエネルギーに変換する点においては、バイオマス発電は火力発電や原子力発電と同様です。

一方、火力発電で用いる化石燃料が再生不可能なエネルギーであるのに対して、バイオマス発電では再生可能エネルギーを燃料に用いていることや、原子力発電と比較して重大な事故のリスクが小さいこと、さらに使用済み核燃料の処理や管理のコストも不要といった特徴を有します。

また、自然由来のエネルギーという点は太陽光発電や風力発電と共通しますが、バイオマス発電の場合は天候条件に左右されず安定的な発電が可能という点も優位性に数えられます。

バイオマス発電の将来性と注目される背景

バイオマス発電はカーボンニュートラルな発電方式であることから、その将来性が高く評価されています

なお、ここでいうカーボンニュートラルとは、発電プロセス全体を通じて二酸化炭素(CO2)の排出と吸収がプラスマイナスゼロ(ニュートラル)、つまり実質的に排出ゼロである状態を意味します。

 

さらに日本国内では、生物資源の供給元となる農林水産業の活性化にもつながるとして、バイオマス発電への期待値が高まっています。

行政による具体的なアクションも始動しており、2014年には「農山漁村再生可能エネルギー法」が施行。これは農業・林業・漁業・畜産業といった重要な一次産業を担う農山漁村が、太陽光や風力、地熱、そしてバイオマスといった再生可能エネルギーによる発電を推進する仕組みが整備されたものです。

林業で生じる未利用木材や家畜の排せつ物、あるいは食品廃棄物を燃料とするなど、バイオマス発電の活用事例もすでに数多く登場しています。

バイオマス発電に使われる燃料

バイオマス発電の燃料として使用される生物資源には、さまざまな種類があります。

木材など比較的乾いた生物資源を指す「乾燥系」と、食品廃棄物など水分を多く含む生物資源を指す「湿潤系」に大きく分類できるほか、製紙工場から出るセルロースや家庭や飲食店から出る食用油(廃油)なども活用されています。

バイオマス発電に使われる燃料

なお、詳細は以下に後述しますが、使用する燃料の種類に応じて発電方式も変わってきます。

バイオマス発電の仕組み

バイオマス発電の方式は以下の3つに分類され、使用する燃料も仕組みに応じて異なります。

発電方式 仕組み 燃料
直接燃焼方式 生物資源を直接燃焼する 燃えやすい乾燥系の生物資源や、廃油、可燃ごみなど
熱分解ガス化方式 生物資源を加熱して発生させたガスを燃焼する 食品加工廃棄物や水産加工残渣など湿潤系の生物資源
生物化学ガス化方式 発酵などの化学反応により生物資源からガスを発生させ燃焼する 家畜の排せつ物や下水汚泥、し尿などの生物資源

それぞれの発電方式の特徴を見ていきます。

直接燃焼方式

直接燃焼方式

直接燃焼方式は、生物資源をボイラーで直接燃焼して蒸気を発生させ、それによりタービン(蒸気タービン)を回して発電する仕組みです。そのため、燃えやすい乾燥系の生物資源や廃油などが燃料に用いられます。また、一般家庭から集めた可燃ごみも利用できるため、ごみ焼却場にバイオマス発電所が併設されていることもあります。

直接燃焼方式は、ほかの方式と比較して総じてシンプルなシステムであり、技術的に高いハードルが求められない点がメリットです。

一方、ボイラーや蒸気タービンなど規模の大きな設備が必須になるほか、ボイラー内を高温状態で維持するプロセスも重要になります。小規模発電には向かず、大規模発電に適している方式です。

熱分解ガス化方式

熱分解ガス化方式

熱分解ガス化方式は、生物資源をガス化炉にて高温で蒸し焼きにし、加熱分解によってガスを発生させます。そこから不純物や有害物質を除去(クリーンアップ)したうえで、燃料として使用しタービンを回して発電する仕組みです。熱化学的変換とも呼ばれ、乾燥系の生物資源のほか、食品加工廃棄物や水産加工残渣といった湿潤系の生物資源も活用できます

熱分解ガス化方式のメリットには、ガスを発生させて燃焼させるため直接燃焼よりも発熱量が高く、小規模での発電効率がよいことが挙げられます。

一方、ガス化炉が始動や停止を繰り返すことで劣化の進行が懸念されることや、ガスのクリーンアップに伴う設備面のコストや高い技術が求められる難しさもあります。

生物化学ガス化方式

生物化学ガス化方式

生物化学ガス化方式は、おもにバクテリアなど微生物のはたらきによって生物資源をメタン発酵させ、それによって発生するメタンガスを燃料にしてタービンを回して発電する仕組みです。生物化学的変換とも呼ばれ、家畜の排せつ物や下水汚泥、し尿といった生物資源が利用されます

特徴は、熱分解ガス化方式と同様に、直接燃焼方式と比較して発電効率が高いことです。また、発生するメタンガスは発電以外の用途にも使用され、メタン発酵をした後の残渣も肥料などに応用できます。

一方、微生物を安定的に活性化させるための設備運用や、メタン発酵の管理・操作には専門的な知識や技術が必須となる難しさもあります。

バイオマス発電のメリット

バイオマス発電のメリット

ここまで見てきたバイオマス発電の概要や燃料、仕組みから、発電方式のメリットをまとめます。

  • 安定した発電量を見込める
  • 二酸化炭素排出量を削減できる
  • 廃棄物を有効活用できる

安定した発電量を見込める

再生可能エネルギーを用いた発電方式は、これまでは太陽光発電や風力発電が主流となっていました。しかし、これらの発電方式は、天候によって発電量が左右されるという運用上の大きな懸念を克服できていません。良好な天候条件の確保が必ず求められるため、発電所を設置できる地域が限定される点も課題です。

一方、バイオマス発電の場合は、生物資源さえ確保できれば、安定的な発電が可能になります。供給体制を構築できるならば、場所を問わず取り組める強みもあります

従来の再生可能エネルギーが抱え続けてきた「安定的な発電」「設置地域」といった難題に対し、バイオマス発電には大きなポテンシャルを秘めているのです。

二酸化炭素排出量を削減できる

バイオマス発電の燃料となる生物資源には、植物由来の資源が多く含まれます。また、これらの植物は成長過程で光合成によりCO2を吸収しています。バイオマス発電ではCO2が排出されますが、CO2を吸収する生物資源を燃料として使用していることから、全体を俯瞰するとCO2排出量は増加していません。

なお、火力発電で用いる石炭も、植物がその由来ではあります。しかし、石炭は再生が不可能な資源です。石炭を燃やして排出されたCO2は、そのまま自然界に純増分として蓄積されます。

一方、バイオマス発電で使用する木質ペレットの供給源である森林は、植林などで生まれ変わることが可能な性質です。このため、バイオマス発電で生じたCO2は、これから生まれ育っていく緑が吸収してくれると考えられます。

つまり、これまでCO2を純増させてきた火力発電に代替してバイオマス発電を推進することは、二酸化炭素排出量の削減につながっていくものと評価できます。

廃棄物を有効活用できる

バイオマス発電で使用する生物資源の多くは、再利用されなければただ捨てられるだけの廃棄物です。廃棄物の処理にもエネルギーやコストが発生するため、これらをバイオマス発電に有効活用できれば、その分のエネルギーやコストを削減できます。

また、特に農業や林業、漁業、畜産業事業者にとっては、廃棄物の再利用はコストの削減のみならず、新しい収益源の確保にもつながります

実際に先行事例として、地域の林業から出される木材を発電事業者が購入してバイオマス発電の生物資源に転用し、発電により得た利益を地域の林業へと還元する仕組みが構築されています。

バイオマス発電のデメリット・課題

数あるメリットの一方、バイオマス発電には克服すべき課題も残されています。

  • コストがかかる
  • 燃料の安定確保が難しい
  • 地域住民からの苦情・トラブル

 

コストがかかる

まずはコストの問題です。バイオマス発電では、生物資源の収集・運搬・保管のコストのほか、発電設備の設置や維持管理・運用コストが必ず発生します。

特に、現在国内で主流となっている木質系の生産資源を使用するバイオマス発電では、大量の木材が必要になります。国内の木材だけでは間に合っておらず、バイオマス発電用の木材の多くを、少なくないコストが付随する海外輸入に依存しているのが現状です。

また、国内の林業が縮小傾向にあることを考慮すると、今後は木材の確保がより難しくなり、さらなるコスト増も懸念されます。

燃料の安定確保が難しい

バイオマス発電の燃料には、農業や林業、漁業、畜産業、あるいは一般家庭から排出される生物資源が使用されるため、その生産量は変動します。必ずしも安定的な確保が可能とは言い切れません。そのため、地域から排出される生物資源を集める体制づくりは欠かせないプロセスとなるでしょう。

また、農業・林業などの一次産業が廃業または縮小してしまうと、生物資源の供給そのものも滞ります。これらの一次産業を維持あるいは活性化させる仕組みづくりも重要です。

地域住民からの苦情・トラブル

バイオマス発電では、発電所の設備稼働に伴う騒音や異臭などにより、地域住民から苦情が出たり、トラブルに発展したりする可能性も指摘されています。

実際に周辺住民とのトラブルを受け、稼働していたバイオマス発電所において防音対策を講じる必要が生じたケースや、さらには発電所が廃止に至ってしまったケースも報告されています。

バイオマス発電所の設置や稼働に際しては、関係法令の遵守はもちろん、住民への説明も含めた地域社会とのコミュニケーションも必要不可欠となるでしょう。

まとめ

国内でも多くの先行事例が登場しているバイオマス発電。生物資源の安定的な確保など解決が必要な課題も残されているものの、カーボンニュートラルな発電方式であることや、廃棄物の再利用を促せることから、地球環境への関心が高まっている現代社会において、今後ますます重宝される技術となるでしょう。

製造業を含む多くの業種・業態において、エネルギー需給は重要なトピックスです。政府のエネルギー方針の動向などを含め、新たな取り組みや技術革新への注視を続けましょう。

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監修者プロフィール

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監修:細原 敏之(ほそはら としゆき)

高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。

この記事を書いた人

Nikken→Tsunagu編集部

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