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業界トレンド

【WEBセミナー開催レポート】『シリコンファンドリー王国ニッポン』の時代がやってきた!

【WEBセミナー開催レポート】『シリコンファンドリー王国ニッポン』の時代がやってきた!

1月27日、株式会社産業タイムズと日研トータルソーシングによる共催ウェビナーを開催いたしました。

『Nikken→Tsunagu』での第二弾ウェビナーとなった今回は、半導体業界に精通する最古参の現役記者として、広く深い見識をお持ちの産業タイムズ・泉谷会長をお招きし、当社執行役員の増井とともに「半導体」とテーマに熱いクロストークを繰り広げています

今回はそのウェビナーの一部をダイジェストにしてお届けします。

レポート記事とあわせてダイジェスト動画をご覧いただくことで、ウェビナー当日の臨場感や詳細な情報を得ていただけます。ぜひ、本記事とともにダイジェスト動画もご覧ください。

動画視聴ページはこちら>>>

プロフィール

株式会社産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉氏のポートレート
株式会社産業タイムズ社
代表取締役会長
泉谷 渉(いずみや・わたる)

プロフィール

株式会社産業タイムズ社 代表取締役会長 泉谷 渉氏のポートレート
日研トータルソーシング株式会社
執行役員
増井 宏二(ますい・こうじ)

第一部:半導体の未来とは

ウェビナーの最初は「半導体の未来」についてから話が始まりました。

半導体を制するものは世界を制す

増井

まず1つ目のテーマは「半導体の未来とは」からお伺いしたいと思います。世の中で「半導体を制するものは世界を制す」などとも言われていますが、この言葉、最初におっしゃったのは泉谷会長だとお聞きしています。

泉谷

そういうふうに言われることもあるのですが、実はこれは私の言葉ではない。「半導体を制するものは世界を制する」と、これは、昔、自民党の半導体議員連盟の甘利明会長(当時)が、安倍元総理、麻生副総理と同席しているときに言った言葉なんです。そのくらい半導体は重視されていましたし、いまでは、世界の国家安全保障、サプライチェーン、軍事防衛、ついては政治経済をひっぱる最大のリーディング役になりました。「半導体は産業の米」などとも言われて、単なる先端技術ではないわけです。それが「半導体を制するものは世界を制する」という言葉に表れているわけですね。それくらいの重要産業だということですね。

産業タイムズ・日研トータルソーシング共催 半導体ウェビナー バナー

自動車産業から半導体事業へ。100年一度の産業界の変革期にある

増井

国策とまでは言わないけれど、それほど重要な産業であるということですね。

泉谷

少し大局的な話をしますと、世界最大の産業はほんの数年前までは自動車産業でした。300兆円の巨大マーケットですから、自動車に勝てる産業なんてなかった。いまも、TOYOTAだ、フォードだ、電気自動車のテスラの時価総額がいくらだと、大きな話題になります。それだけ自動車産業は大きい。日本でも、戦後経済を一貫してひっぱったのは自動車産業です。ところが2022年の春にとんでもないことが起きていることがわかった。なにが起きたかと言うと、自動車の2割減産なんです。2017年、2018年の年産1億台をピークに、世界出荷台数が8000万台くらいまで落ちている。年間の出荷額が250兆円くらいなんです。一方で、史上初めて自動車を抜く産業が現れた。260兆円に達した、電子機器産業です。社会的な背景はいろいろと考えられます。コロナによるテレワークの増加、それに伴うパソコン需要の急増、コロナ以前からのスマホ需要の拡大、そういったあらゆることが全部押し上げていった結果として、電子機器が自動車産業を超えるような巨大産業になったんですね。

増井

それほどの数字になっていましたか。

泉谷

僕の計算では、現在270兆円から280兆円に達していると思います。仮に、これから自動車の出荷台数が1億台に戻ったとしてもこの数字には届かないと思います。自動車産業そのものは成熟産業なんです。急成長は期待できない。しかし、電子機器は、SDGsもあるし、メタバースの発展も見込まれます。特にこの巨大メタバース革命は大きな影響を及ぼすでしょう。それから、5G、6G、10Gの高速通信の発展、普及もある。そういったことを考慮すると、電子機器産業自体が、今後も最低でも10~15%程度の成長を見込んでもおかしくない。 ですから、簡単に言いましょう。電気が自動車に勝ったんです。これがいまという時代なんです。この現在地、ポジションを認識しないと先に進むことはできないんですね。まさに50年に一度、100年に一度の時代の転換期に今いるんだということなんです。自動車の生産台数が世界で1万台に達したのは1900年のことです。アメリカで大量生産が始まったのが1910年代。それから世界の産業は自動車を中心に回っていました。まさにいま、それと同規模の変化が起こっているんです。

電子デバイス全体の売上のなかで、半導体は25%以上を占めている

増井

いまそういった大きな変化に直面しているということですね。ただ、ひとことで電子機器産業と言ってもその中身は多様です。

泉谷

電子機器産業の売上高260兆円のうち、ほぼ半分が電子デバイスです。その電子デバイスのなかでも1番大きいのが半導体で70兆円なんです。2番目が一般電子部品と言われている分野で、これが半導体の約半分、35兆円ほどになっています。ちなみに、一般電子部品ってなんだという人も多いと思いますので簡単に補足すると、一番有名なのはコンデンサーです。とりわけ、積層セラミックコンデンサーですね。それからインダクター、プリント配線基板、コネクター、抵抗器など幅広い。3番目が液晶や有機ELのディスプレイで、15兆円くらいになるはずです。その他、リチウムイオン電池などの電池類、2次電池がありますけど、それら全部を含めて電子デバイスです。どれも単体で見るのではなく、それらすべてを統合して物事を考えなければいけません。
ただ、はっきりしていることがあります。この電子デバイスの中核に存在するのは半導体であることです。

かつて世界の半導体の半分を握っていた日本は、いまでは数%に急落

総務省公表の半導体生産量グラフ

出典:総務省 我が国ICT産業の世界的な位置付けの推移

増井

自動車の時代から電気、とりわけ半導体の時代になっているということですね。そのなかで、日本のポジションというのも気になります。

泉谷

正直に言うと、日本の半導体に関する立ち位置は非常に厳しい。1989年から90年頃、いわゆるバブルの絶頂期ですが、この頃の日本は、半導体の世界シェアで半分以上、53%を占めていて、ぶっちぎりのトップでした。まさに半導体王国ニッポン。日本の日経平均株価は4万円に近づき、GDPはアメリカを追い抜く寸前まで行きました。当時の日本は本当にすごかった。半導体も日本メーカー抜きで世界は回らない。日本は世界の勝ち組だったんです。

増井

現状は全く違いますね。

泉谷

そうなんです。バブルが崩壊し、失われた10年と言われ、さらにリーマンショックにもたたきつぶされて、いまでは日本は負け組になってしまった。半導体のシェアでも、6%から8%くらいしかない。いまでは日本が作る半導体なんか世界中、誰も見向きもしない。情けないと思いますよ。これ以上下がったら日本の半導体産業は絶滅すると言ってもいいくらいなんです。政府がラピダスという半導体メーカーを作って、異次元の半導体支援をやるといいだしたのは当たり前です。日本の半導体産業を殺すわけにはいかない。いま反撃するしかない。1つ申し上げたいのはですね、日本の半導体に世界が見向きもしないと言ってるのは、一番大きいシステムLSIで負けたからなんです。クアルコム、ブロードコム、エヌビディア、彼らがシステムLSIを握った。これでスマホ市場を握られてしまった。そして、インテルにパソコンのCPUを取られた。つまり、システムLSI、CPU、中央演算装置で負けたわけです。それから、メモリーで一番市場が大きいDRAM、これも負けてしまった。広島にエルピーダメモリという、日本で唯一DRAMを作る会社がありましたが、これをマイクロンというアメリカ会社に買収された。これで、日本はDRAMも失った。システムLSI、DRAM、この二つを作らなくなったから、苦しい。

局地戦では強いメーカーもまだまだある日本。鍵はシリコンアイランド・九州

増井

政府の支援もありますが、今後の日本の半導体産業の見通しはどのように見えていますか?

泉谷

局地的には強い分野もあります。たとえば、CMOSセンサー、これはスマホなどに搭載されているカメラの心臓部です。これは、九州一円にメーカーが集まっていて、世界の50%のシェアがある。自動車に搭載されているマイクロコントローラーも車載マイコントップシェアはルネサステクノロジーです。これが熊本、川尻に拠点がある。LEDでも四国の日亜化学が世界でもトップメーカーです。いわゆるパワーデバイス、パワー半導体、IGBTの分野でも世界で三菱電機以上のメーカーはないと言っていいでしょう。この工場は福岡にありますね。シリコンカーバイトと言われるパワー半導体もロームです。局地的には強いメーカーもたくさんある。何から何まで負けているわけではない。ここでポイントは、これらの工場のほとんどは九州にあるということなんです。九州シリコンアイランド、ここにすべてがあるんです。

増井

世界的な市場動向はどうなっているでしょう?

泉谷

世界の半導体市場は、2020年で+5%程度でした。コロナ禍の影響があったのだと思いますが、その翌年、2021年は25%もの成長を見せました。先ほど話題に出たコロナ禍での需要拡大でしょう。2022年も当初は15%くらい伸びるだろうと考えられていたのですが、夏頃から在庫調整が始まって数字が落ち込んでいった。まだ最終的な数字は出ていませんが+5%程度になりそうだということです。2023年はマイナス成長、-5%くらいじゃないかと予想されていますね。実は私は、この予想を過去に外したことはないのですが、私自身は横ばいではないかと考えています。(2023年の)夏ごろまでは苦しいでしょうが、その後、メタバース革命のインパクトで一気に上昇すると予想しています。

第二部:半導体における日本の強み

DRAMからMRAMへの移行で「日本復活」

増井

次に、半導体における日本の強みについて、お話を伺いたいと思います。私は日本メーカーがデバイスよりも、素材であったり、装置であったり、というところでかなり強いと思ってます。

泉谷

それは3つのポイントがあります。まず、一つはデバイスが弱いと申し上げました。でもこれは、「いまは」という言葉がつきます。これからゲームチェンジが起こると思っています。それがまずメタバースです。メタバースでゲームチェンジになれば、DRAMが衰退して、MRAMの時代になります。このMRAMの基本特許をすべて、東北大学が持ってるんです。これは、日本、圧倒的に有利です。

増井

それは強いですね。

泉谷

2つ目もメモリーの話なのですが、ラピダスのなかで、東京大学の黒田忠広先生が経産省の国家プロジェクトとして取り組んでいるのが、SRAMというメモリーです。スタティックRAMですね。しかも、三次元積層型、三次元SRAMと呼ばれるものです。黒田先生の三次元SRAMは、あと1年以内に東京大学で完成します。完成したら、次は製造ですが、それを作る工場は当然日本国内になります。日本でメモリーを作るといえば東芝が最有力です。あるいは富士通か。黒田先生がやってる積層SRAMと遠藤先生がやってるMRAM、この2つで十分にゲームチェンジできる。そしたら日本復活の、メモリーにおける日本復活の材料が調うわけですから、けして夢は捨てないでもらいたいですね。もう一度、メモリー王国日本を作ることができると思いますね。

SDGsと半導体の深い関係

増井

MRAMとSRAMの2つの特許が大きいということですね。3つ目のポイントは何でしょうか?

泉谷

順番に話していく必要があるのですが、いま、世界中の市場で何が話題になっているか、課題なのかと言うと、それは間違いないSDGsなんです。2050年までにカーボンゼロと目標を掲げている。これを実現したければ再生可能エネルギーにシフトとするしかないんです。しかし、個人的には、発電において化石燃料をゼロにできるかと言うとそれは難しいと思っています。ならば、消費電力を抑える方向で考えていく必要がある。いま、電力をどこで消費しているかと言うと、データセンターなんです。そのデータセンターで一番大事な半導体が、パワー半導体です。再生可能エネルギーの発電でもパワー半導体か不可欠です。カーボンゼロに向かっていきために重要なのは、パワー半導体だという話になります。これが3つ目のポイントです。また自動車ですが、実は自動車というのはとてもアナログな機械で、一台あたりで電気機器は数万円しか使われていない。しかし、これが電気自動車に変わってくると10万円以上に跳ね上がるんです。加えて、自動運転になるとさらに倍、20万円に達して、AIとつながるコネクテッドカーになると30万円を超えてくる。自動車の出荷台数はいままでのようには伸びないでしょうが、一台あたりに含まれる半導体の量は飛躍的に伸びていく。これは間違いない。

増井

パワー半導体が鍵を握っているということでしょうか。

泉谷

いま、パワー半導体の市場は1.5兆円くらいです。しかし、これはすぐに4兆、5兆になります。個人的にはもっと上、あっという間に10兆円くらいまで伸びてもおかしくないと考えています。現在のNANDフラッシュメモリーの市場を抜くとさえ思っている。このパワー半導体に関しては、日本が市場の半分ほどを占めているんです。IGBTを作らせたら、三菱電機以上のメーカーはない。TOYOTAのプリウス、あるいはレクサスに搭載されているパワー半導体はほぼすべて富士電機です。ホンダはローム。他にもサンケン電気、新電元工業、東芝デバイスなど、優れたパワー半導体メーカーがある。ルネサスも甲府工場でパワー半導体の製造を始めました。パワー半導体こそが日本が生きる道だと思います。正確には、パワー半導体と新型メモリー、COMSセンサーが日本の半導体復権のカギだと思います。

第三部:半導体における日本の人材

DRAMからMRAMへの移行で「日本復活」

増井

最後の話題になるのですが、日本の半導体産業を考える場合、そこで働く人材の話は無視できないと思います。

泉谷

まず教育がポイントです。よくこういうときに、政府が、大学が後手に回っているという話題も出るのですが、半導体についてはそうではありません。なかでも九州は動きが早い。九州中の高専に半導体専門課を設けることが決定しています。高専の段階から半導体の人材育成の取り組むということです。僕は先週、九州大学の副学長に会ったのですが「人材育成しかないんだ」と、「徹底的に(半導体産業に)あわせこむ人材を育てていく」とおっしゃっていました。九州大学では今後5年間で25人の若手の准教授を育成するそうです。おそらく半導体に専門特化した若手の教授、准教授を育てて、彼らを中心に多くの産学協同プロジェクトを進め、新しい開発を始めると言うんです。プロセス開発、回路設計、全部やると言っていました。

増井

なかなか本気度が伝わってきますね。

泉谷

いえ、そこまでは僕はあんまり驚いてなかったんです。しかし次の言葉で持っていた鉛筆を落としました。「九州大学はこのプロジェクトに20億円投入する」と言うんです。徹底的な天才教育にお金はかかるんだ、だから投資する。天才クラスを育てあげるには、20億円かかるんだと、言うんです。僕は「これは本気だ」と頭クラクラしたのですが、今度は北九州の九工大の学長に会った。そしたら、「九大もようやく動くんですね」と言う。なんと九工大は先んじて取り組んでいるんだというわけです。黒崎に安川電機と組んで、安川電機のなかに研究所を設けて一緒に研究を行っている。安川電機に出入りしてくるデバイスメーカー、材料メーカー、そういう人たちとも一緒になって先端研究に取り組んでいる。「大学は学内にとどまるな、もう外に出て行け、いろんな企業の研究所で一緒になって研究に取り組め」というわけです。そこから、間違いなく新しい人材がでてくる。この動きは関東にも伝わりだしています。九工大の学長が言うには、日本中で高校や高専で半導体専門課とか、中学校の学習でも半導体を教えるようになってきている。半導体を「一般国民にとっても身近なもので、なおかつ国を支える産業なんだ」と意識づけるには、小学校、中学校、高校から教えなければならない。そういう動きが文科省を含めて、動き始めているんです。僕の個人的な考えですが、いまの人材不足と人材育成については、熊本大学も、東京大学も京都大学も、九州大学もみんな始めてます。東京大学もすごい勢いで人材育成をやってます。これは大学や高専や、教育を専門とする人たちに任せておけばいい。次の人材を育てるって意味では、動きが活発になっているんです。だけど現実に、いま人手不足なんです。全く人が足りていない。シリコンアイランド・九州と言っても現地雇用ではまったく足りないのが現状です。すると、日本中にいる人材、そのなかから選りすぐった人材たちを組織化して、それを必要なところに、東北なら東北、広島なら広島、九州なら九州に配置していく。そういった動きが必要だと思います。たとえば、斜陽産業で仕事を失った人たちもいるわけです。そういう人たちに専門教育を施して最配置していく。産業構造が変わることによって大量に失業してる人たちを半導体業界で活躍してもらう必要がある。こういうことは、人材の専門企業でないとできない。

増井

まさにいま弊社が取り組んでいるのがその分野です。これは、どんどん促進していきたいとと考えています。ただ本当にまったく製造業の経験がない人は、数週間の短期間の研修では厳しい。弊社では2、3カ月はしっかりとやらせてもらってます。そのかわり、きちんと現場で活躍できる人材を育てていく。半導体産業復活させるためにも邁進したい。社をあげて取り組んでいきたいと思ってます。

泉谷

まさに、日本の半導体産業の復活は人材復活にあり、ですね。

増井

東北、広島、また今週、東広島など、日本中で開催されている半導体フォーラムに参加するのですが、最後、七割がたは人材の話になります。みなさん、人材が大切だということは肌で感じ取られているのでしょう。

まとめ

一時は世界を席巻していた日本の半導体産業の現状、そして今後の展望から日本の半導体産業復権の鍵まで、泉谷氏には広く深い知見で語っていただけました。
「半導体産業の復権、成長の鍵を握るのは、人材だ」そう語った泉谷氏に言葉を肝に銘じ、日研トータルソーシングでは、今後も半導体メーカー様を中心に人材育成、人材の再配置に取り組んでいきたいと感じました。

この記事を書いた人

Nikken→Tsunagu編集部

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