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業界トレンド - ものづくり

ナトリウムイオン電池とは? 実用化に向けた課題と中国CATLなど各企業の動き

ナトリウムイオン電池とは? 実用化に向けた課題と中国CATLなど各企業の動き

2035年までに新車販売を電動車のみとする方針が政府から打ち出されるなど、脱炭素社会の実現に向けて日本国内でも電気自動車(EV車)への移行が進められています。EV車は価格や航続距離の面での課題が依然残っていますが、これはいずれもバッテリーの性能に関わるものです。

近年、中国CATL社の積極的なアクションが見られていることを筆頭に、EV車に搭載するバッテリーとしてナトリウムイオン電池に注目が集まってきています。ナトリウムイオン電池が注目されている背景や、実用化への課題などについて紹介していきます。

ナトリウムイオン電池とは:リチウムイオン電池との違い

ナトリウムイオン電池の説明イラスト

ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と同様に、充電と放電を繰り返して利用できる二次電池と呼ばれるものです。二次電池は正極と負極に特性の異なる素材を用いて、間にセパレーターを設けて、電解液で満たされたケースに収められているという構成になります。

ナトリウムイオン電池はリチウムイオン電池と動作原理は同じです。充電する時には正極側のイオンが電解液を通って負極側に移動して蓄えられ、正極と負極の電位差によって充電されます。反対に電気エネルギーを使う時は、負極に蓄えられていたイオンが、正極側に移動して蓄えられると放電するという仕組みです。

リチウムイオン電池とナトリウムイオン電池で大きく異なるのは電解液を移動するイオンです。リチウムイオン電池ではリチウムイオン、ナトリウムイオン電池ではナトリウムイオンが電解液を移動します。

ナトリウムイオン電池が注目されている背景

電気自動車の充電

EV車の実用化・普及のカギを握るのはバッテリー性能とされています。ナトリウムイオン電池にはリチウムイオン電池にはないメリットがあり、これまで課題とされてきた項目がクリアできると期待され、主流となっているリチウムイオン電池に代わる可能性があるとして注目されているのです。

ナトリウムイオン電池が注目されている背景には、次の点が挙げられます。

  • エコ&高コストパフォーマンス
  • リチウムイオン電池製造装置を流用できる
  • 急速充電に対応

エコ&高コストパフォーマンス

EV車は従来のガソリン車と比較して、車体価格が高いことが普及の足かせの一つになっています。そしてEV車の価格が高い要因となっているのがリチウムイオン電池の「価格」です。

リチウムイオン電池に使用されるリチウムはレアメタルのため高価です。今後リチウムイオン電池の普及が進むと、さらに枯渇してしまい価格上昇が起きることや安定供給が難しくなることも懸念されています。

これに対して、ナトリウムイオン電池に用いるナトリウムは食塩の化合物でもあり、地球上の海水などに豊富に存在する資源のため安価です。このレアメタルフリーを実現できるという点は、ナトリウムイオン電池の大きなメリットといえるでしょう。また、リチウムイオン電池では基盤に銅箔を使用しているのに対して、ナトリウムイオン電池はアルミ箔が使用できるという点でもコストを抑えられます。

しかし、ナトリウムイオン電池は原材料費が安いという点が魅力ではありますが、まだまだ開発途上にあり、量産化技術も確立していないため、今後開発が進んでビジネスとして成立するかという面では未知数です。

リチウムイオン電池製造装置を流用できる

もう一点、コスト面で期待されている点として、ナトリウムイオン電池の基本構造がリチウムイオン電池と似ていることも理由に挙げられます。リチウムイオン電池の製造装置を流用できることから、新たな設備投資費用を抑えられるという優位性は見逃せません。

急速充電に対応

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池で課題とされてきた急速充電の面で優れていることも、注目されている理由です。
スマートフォンにナトリウムイオン電池を搭載すると、従来の5~6倍の速さで充電が完了するともいわれています。そこで充電速度が課題とされてきた、EV車への応用も期待されているのです。

ナトリウムイオン電池のデメリット:実用化に向けた課題とは

ナトリウムイオン電池のイメージ

ナトリウムイオン電池は、リチウムイオン電池から置き換わるとは現時点では言い切れず、実用化に向けた課題も残っています。リチウムイオン電池の実用化の妨げとなるデメリットについてみていきます。

安全性への課題

そもそもナトリウムイオン電池は、正極や負極に使用する材料や電極構造の開発はリチウムイオン電池ほど進んでいません。そのため、ナトリウムイオン電池は安全性の面での課題が残されています。

ナトリウムとリチウムの粒子サイズの違い

アルカリイオン電池には、負極にアルカリイオンとグラファイトが使用されています。充電をする際に正極側のアルカリイオンが負極に移動すると、グラファイトは炭素の壁が整然と並ぶ構造になっていることから、リチウムイオンが間に入って吸着するという仕組みです。

しかし、ナトリウムは粒子のサイズがリチウムよりも大きく、グラファイトの炭素の壁の間に入ることができません。そのためナトリウムイオン電池は、アルカリイオン電池よりも電気容量が大幅に小さいものしか作ることができませんでした。

しかし昨今の技術革新で負極の材料にハードカーボンを使用したことにより、ナトリウムイオンを吸着できるようになりました。ハードカーボンは炭素の壁がランダムにある構造のため、粒子の大きいナトリウムでも吸着することができるのです。

ナトリウム自体の安全性

また、ナトリウム自体の安全性も懸念されています。ナトリウム金属を取り出す際に発火事故につながりやすく、酸化すると水と激しく反応するため、空気中で自然発火しやすいという特性があるためです。

リチウムイオン電池でも発火事故が起きることがありますが、現状ではナトリウムイオン電池の方がより安全性が低いとされています。

エネルギー密度の低さ

ナトリウムイオン電池はエネルギー密度が低いことも、実用化が難しいとされる理由です。なおエネルギー密度とは、単位体積または単位質量あたりの電池から取り出すことができるエネルギーの量のことをいいます。

ナトリウムイオンは体積が大きく、負極のハードカーボンの内部構造の炭素の壁の中に効率よく蓄積できないことから、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度は低くなります。鉛蓄電池よりはナトリウムイオン電池のエネルギー密度は高いものの、リチウムイオン電池には遠く及ばず、10倍以上の差があるとされてきました。

そのため、航続距離を伸長することが求められているEV車向きではなく、ハイブリッド車(HV車)やスマートフォン、再生可能エネルギーの蓄電設備、あるいはEV車では農村で使用される低速のタイプといった用途で普及が進むとする見方もあります

しかし、ナトリウムイオン電池の開発が進んだことで、エネルギー密度の低さに関する課題はクリアされつつあります。東京理科大学では、負極材料に使用するハードカーボンに関して、製法を変えることでナノサイズの空孔が多いものを作りだすことに成功しました。これにより、高容量リチウムイオン電池を上回るエネルギー密度のナトリウムイオン電池の開発が進行しています。

 ナトリウムイオン電池をめぐる企業の動き

電波のイメージ図

ナトリウムイオン電池に関わる企業はどのような動きを見せているのでしょうか。ナトリウムイオン電池の開発の実情や実用化に向けた動きのほか、具体的なアクション、各社のとっているポジションや考えについて紹介していきます。

CATL:リチウムイオン電池との統合パックを実用化、バリューチェーンの構築へ

CATLはEV車用電池で世界最大手トップクラスの中国企業で、長年にわたってナトリウムイオン電池の開発を行っています。

CATLでは2021年7月、ひとつのパックにリチウムイオン電池とナトリウムイオン電池のセルを統合した「ABバッテリーパックソリューション」を発表しました。リチウムイオン電池と統合することで、ナトリウムイオン電池のエネルギー密度不足の課題を補うとともに、低温状況での電力容量の保持率の高さという利点を活かす狙いがあります。

また2021年8月には、最大で582億元(約1兆円)の増資を行うことを発表しました。この増資の多くはEV車用電池の増産を目的とし、福建省と広東省、江蘇省の5箇所の電池工場の新設や増設に充てられます。

さらにCATLは2023年までに、ナトリウムイオン電池の基本的なバリューチェーンの構築や用途の開拓などによって実用化を目指す方針を示しています。

トヨタ自動車:全固体リチウム電池の開発をメインにナトリウムイオン電池の開発にも関心

トヨタ自動車では、2030年までにHV車やEV車向けの車載電池に1兆5,000億円を投資することを発表しています。トヨタ自動車が力を入れているのは全固体リチウムイオン電池の開発です。2020年前半までに航続距離を伸長した次世代型の全固体電池の実用化をまずはHV車、次にEV車と進めていく方針です。

このようにトヨタ自動車はリチウムイオン電池を主軸として据えていますが、レアメタルのコバルトやニッケルの価格面の課題から、こうした材料を使用しない安価な電池の開発も視野に入れています。

ナトリウム電池について、先程申し上げたような電圧というか、容量密度を考えると、やはりリチウムとナトリウムとでは、モビリティ用にはリチウムのほうがナトリウム電池と比べて良いと考えている。ただ、先ほどのご質問にもあったが、資源の面を考えるとナトリウムの方がより確保しやすく、再エネ用や定置用電源としてナトリウム電池の必要性は当然あると考えている。私共も研究開発はしており、特に着目点は負極の開発、また、ナトリウムの扱いについて工程上のリスクがあるため、対応をしっかり考えながら、研究開発をしているとご認識いただきたい。

電池・カーボンニュートラルに関する説明会 議事録(国内投資家・アナリスト向け)|トヨタ自動車

これはCATLのナトリウムイオン電池が話題になっていることに対する評価について、投資家からの質問を受けたものです。トヨタ自動車としては、現状ではナトリウムイオン電池の可能性は認めており研究開発も行ってはいるものの、開発の主軸とはしないスタンスといえます。

日本電気硝子:全固体ナトリウムイオン電池の量産体制を整備

日本電気硝子は滋賀県大津市に本社を置くガラスメーカーで、液晶ディスプレイや有機ELディスプレイ用のガラスや、ガラスファイバー、ガラスブロックなど特殊ガラス製品を手掛けています。

通常、全固体電池にはリチウムイオンを使用しますが、日本電気硝子では長岡技術科学大の本間剛准教授とタッグを組み、リチウムイオンを全く使用しない全固体ナトリウムイオン電池の開発を進めています。2020年6月には全固体ナトリウムイオン電池で、従来の約20倍の電流を取り出すことに成功しました。ナトリウムイオン電池を全固体電池にすることで、通常のリチウムイオン電池よりも安全性能を高められるほか、コスト削減も図れます。

日本電気硝子では2025年までに全固体ナトリウムイオン電池の量産体制を整備して、実用化することを目指しています。

まとめ

EV車用の電池は現状ではリチウムイオン電池が主流ですが、その価格の高さからEV車の普及が思うように進んでいない要因となっています。また、リチウムや正極に使用するニッケルやコバルトは、原料の枯渇によって、今後の安定的な供給が難しくなることも危惧されています。

開発が進むEV車のバッテリーとして、ナトリウムイオン電池は将来の選択肢のひとつとなってくるかもしれません。

プロフィール

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監修/細原 敏之(ほそはら としゆき)

高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。