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業界トレンド - ものづくり

なぜ製造業は人手不足なのか?データから読みとく理由と人材確保・定着対策

なぜ製造業は人手不足なのか?データから読みとく理由と人材確保・定着対策

少子高齢化や離職率の増加などの要因を受け、国内の人手不足はますます深刻化しています。製造業では特にその影響が顕著に表れており、人材の募集をかけても、必要な人員を確保できないケースが目立っている状況です。

製造業の人手不足の現状をみたうえで、人手不足の原因や対策について考えていきます。

この記事でわかること
  • 技能人材を課題とする企業はおよそ6割
  • 製造業の人手不足は3Kイメージの払拭が大切
  • 派遣や委託、海外人材の活用、DX推進による自動化などを取り入れ人材確保を

なぜ製造業は人手不足なのか

製造業の多くの企業が人手不足に陥っていることはデータからも明らかであり、特に技能人材が不足しています。その要因には、労働力人口の減少のほか、製造業特有のマイナスイメージがあることも挙げられます。

統計データで顕在化する製造業の人手不足の実態

経済産業省の2017年12月の調査によると、製造業の94%以上の企業で人手不足が顕在化していると回答していることから、製造業のほとんどの企業が人手不足に陥っている実態がうかがえます。

また、製造業の32%の企業はビジネスにも影響が出ていると回答しており、業種別にみていくと、特に輸送機械や鉄鋼業、非鉄金属、金属製品で、人手不足が大きな課題となっている企業が多い傾向です。

出典:経済産業省「製造業における人手不足の現状および外国人材の活用について」

突出する「技能人材」の不足

経済産業省が取りまとめた「2018年版ものづくり白書」によると、確保が課題となっている人材の中でも突出しているのは、技能人材です。

複数回答では83.3%、特に確保が課題となっている人材としては59.1%の企業が「技能人材」と回答していることから、特に技能人材の人手不足が著しいといえます。

出典:経済産業省「2018年版ものづくり白書」

製造業の人手不足の理由

製造業が人手不足に陥っている理由には、労働力人口の減少はもちろんのこと、製造業は「残業が多い」「離職率が高い」といった負のイメージを持たれやすい業界特有の側面が挙げられます。

また、人材の流動化によって従来の「見て覚える」方法では技術の継承が難しく、人材が育っていないことも人手不足の要因となっています。

国内の労働力人口の減少

少子高齢化によって国内の労働力人口は減少しています。また、東京への一極集中によって、東京では人材が集まりやすくなる反面、製造業は土地の安い地方に工場を設けている企業が多いため、人口の流出によって人材が確保しにくくなっています。

一方で、海外へ製造拠点を移していた企業が国内回帰を図る動きもあります。海外との価格競争に巻き込まれている現状では、待遇の向上を図ることが難しいことから、求人を出しても人が集まりにくい状況となっているのです。

世代交代の失敗と後継者不足

日本の伝統的な技術継承は「言って聞かせる」「やって見せる」「やらせてみる」というOJT(On-the-Job Training、実務を任せながら行う職業教育のこと)の手法です。この手法はTWI(Training Within Industry、職場の実務中に監督者に向けて行う職業訓練のこと)などで海外でも認められた手法です。また、10年程度、現場で経験を積んだ後、調達や開発、設計といった部署に異動する流れとなっていました。

しかし、人材の流動化が進む昨今では、より条件のよい企業へと人材が流れていってしまうため、こうしたやり方では技術が継承されていきません。さらに、団塊の世代が大量退職したにも関わらず人材が育っていないことも、人手不足を招いている要因です。

経済産業省の「2020年版ものづくり白書」によると、ものづくり企業が直面している経営課題に関する問いに対して、大企業・中小企業ともに約42%が「人手不足」を挙げているほか、大企業の17.1%、中小企業の22.7%が「後継者不足」と回答しているなど、後継者不足の課題も浮き彫りになっています。

出典:経済産業省「2020年版ものづくり白書」

3Kの負のイメージ「きつい」「汚い」「危険」

製造業は3Kと呼ばれる「きつい」「汚い」「危険」といったマイナスイメージがあり敬遠されやすいことから、ほかの業種に人材が流れていることも、人材不足を招いている理由です。

製造業の現場では、24時間稼働している工場なども多く、シフト勤務の入り方によってはキツいと感じる方もいます。また、油や化学薬品による臭いがきつい、作業服が汚れやすいといったケースもあります。

KYTを実践・徹底するなど実際には工場による違いがあるにも関わらず、負のイメージが先行することで人材が集まりにくくなっているのです。

製造業の人手不足の影響

製造業では、人手不足によって実際にビジネスへの影響も出てきています。会社の競争力の低下や利益の減少を招くほか、生産ラインが維持できず黒字倒産に追い込まれるケースも起こりえる状況です。

会社の競争力が低下

若手人材が確保できない状態が続くと、社歴では中堅社員にあたる人材が、本来であれば新入社員が担当するような下準備のような業務までこなさなければならない状態になります。

新たな価値を創造するような高度な判断が必要となる仕事に専念するのが難しい状況が続くことで、人材の成長は阻害され、会社の競争力は徐々に低下していきます。

利益が出ない仕事が続く悪循環

取引先から受注した仕事への対応が人的リソースの面から難しくても、今後の関係性を考えると請け負わざを得ないケースは少なくありません。しかし、自社の人材だけでは賄えず外注費が膨らむと、利益がさほど出ない仕事となってしまいます。

そして、利益が出ない仕事によって経営が圧迫されると、従業員の待遇改善が難しくなります。人手不足が改善されず、外注費がかかって利益が出ない状態が続いてしまうのです。

生産ラインを維持できず倒産してしまう例も

製造業の中でも、特に中小企業では正社員での採用が進んでおらず、ギリギリで現場をまわしているといった工場が少なくないのが実情です。そのため、受注が好調で事業が順調であっても、人手不足から生産ラインを維持できず、黒字倒産してしまうケースも発生しています。

製造業の人材確保対策

一方、製造業の中にも、人材確保に成功し人手不足を解消している企業もみられます。

製造業で人材確保を進めていくには、労働環境を整備して負のイメージからの脱却を図ることが重要です。また、期間従業員や派遣社員、外国人材を登用する方法もあります。あるいは、DX推進やナレッジマネジメントの導入によって、業務や教育体制の効率化を図るなど、業務を遂行する体制を見直すことも人手不足解消に効果的です。

負のイメージからの脱却

製造業は「きつい」「汚い」「危険」という負のイメージを持たれてしまいがちです。しかし、昨今の工場ではオートメーション化が進み、危険な作業や単純作業は機械が担うケースが増えています。また、働き方改革を推進し、時間外労働を削減している工場もあります。

5Sを徹底し労働環境を整備して負のイメージからの脱却を図り、自社サイトやSNSでアピールをすることで、就業に興味を持つ人が増えてくることが期待できます。

人材の流動化に備えた組織整備

人材の流動化がますます進む中、正社員雇用にこだわって人材を育成していても、やがて流出するリスクは避けられません。また、製造業は景気の変動に左右されやすい側面があることからも、期間従業員や派遣社員の登用や外部委託の活用を行うなど、人件費を調整しやすい組織体制への変化が求められています。

外国人材の登用

技能実習制度を利用して外国人材を登用するという方法もあります。

技能実習制度とは、外国人の技能実習生が出身国では習得が難しい技能の習得を図ることを目的としたものです。技能実習生は受け入れ先の企業と雇用契約を結び、期間は最長で5年間となります。なお、外国人技能実習制度は対象職種が定められていますが、製造業では約50職種が対象となっています。

業務と人材育成の効率化

DX推進や自動化によって業務効率化を図ることで、これまでよりも少ない人数で業務を担えるようになります。

また、業務効率化には、ベテランの仕事ぶりを「見て覚える」ことを主体として仕事を覚えるまでに長年かかっていた教育体制から脱却し、人材育成を効率化することも大切です。ベテランの技能人材の持つノウハウや技術を言語化して企業で共有する、ナレッジマネジメントの推進が効果的な施策となるでしょう。

 

まとめ

製造業では技能人材を中心に人手不足が顕著となっており、働きやすい労働環境を整備するなど、ほかの業種への人材の流出を防ぐ対策をとることが重要です。また、投資及び利益を考慮した業務の自動化と、期間従業員や派遣社員のバランスのある活用により、景気の変動に柔軟に対応できるようになるとともに、人材が流動化する時代に即した人材確保が図れます。

プロフィール

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監修:細原 敏之(ほそはら としゆき)

高分子材料を利用した自動車電装部品の設計、製造、生産技術(設備設計、レイアウト検討)及び品質保証業務などを歴任し、トヨタ自動車関連のティア1サプライヤーであるデンソー、アイシン精機及び三菱電機株などを主要顧客とした業務の責任者を担当。その後、タイ・バンコックでの工場建設の代表取締役、発電所などの金属ガスケットやシール材などの開発・マーケティング担当を経て独立。工場の品質管理、生産管理及び労務管理の業務や、ISO審査員及び経営コンサルティング業務を開始し、現在に至る。

 

 

この記事を書いた人

Nikken→Tsunagu編集部

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